建設物価調査会

建設物価2020年6月号

道路台帳や固定資産評価から遺跡調査まで、国内外の多様な領域に広がるソクジョのお仕事

2015年6月に発足した測量・地理空間情報 女性技術力向上委員会(ソクジョの会)は、今年で6年目を迎えます。建設や土木の分野で欠かすことのできない測量。測量・地理空間情報分野は広く、技術の進化とともにその領域も拡大を続けています。測量業界で活躍するソクジョの会メンバーのみなさんの多様な経歴と仕事をご紹介します。

ソクジョの会委員長
杉森 純子 さん 朝日航洋株式会社
空間情報事業本部 技術企画部 技術・知財戦略室

 子どもの頃から地図が好きで、小学生の時には誕生日プレゼントに地球儀を買ってもらい、授業中は地図帳ばかり見ていて先生を困らせるほどでした。大学でも地理学を学び、地図コンサルの名前に惹かれて今の会社に入りました。以来、地図を作成する業務に関わり続けています。入社3年目からは海外の仕事をしています。日本の政府開発援助(ODA)として海外で地図づくりの指導や現地で地図を作ることもあります。1995年入社ですが、ソ連崩壊後のカザフスタンやキルギスなど、中央アジアの国々の地図づくりを担当しました。日本は橋や病院建設といった援助だけではなく内戦後の緊急復興の地図製作支援などもしていて、測量業界は国際援助に深く関わっています。


ソクジョの会副委員長
山口 由美子 さん アジア航測株式会社
事業推進本部 事業戦略部 事業企画推進室 係長

 学生時代に情報処理を学び、システム作りをしたいと思い、今の会社に入りました。市区町村で使われているシステムの運用サポートを担当し、その後、技術営業の部門に異動して説明会や展示会のデモなど全国各地に出張しました。この業界では同じ分野に長年携わる人もいますが、私はさまざまな部門を経験しています。「図化名人」という当社が開発した地図作成ソフトの販売部門にいたこともあります。アフリカのマラウイで現地調査や地形図作成業務に携わったり、3次元モデルを扱う部門ではエンターテイメント系の仕事や、遺跡や城跡にも関わらせていただきました。現在は事業戦略部で全社の企画、事業推進の仕事を担当しています。


川越 みなみ さん 朝日航洋株式会社
東京空情支社 資産情報部 資産情報1グループ

 就職の時に公務員以外で、社会貢献ができる会社や職種がいいなと思いコンサルタントの仕事を探しました。現場の作業にも興味があり、いろいろな会社の説明会に行きましたが、朝日航洋は雰囲気が落ち着いていて好印象を持ちましたし、女性でも現場に出られることが決め手になり入社しました。仕事を始めて10年目ですが、自治体の税務課の委託を受けて固定資産評価のデータ作成をしています。測量会社でこういった業務をしていることは入社してから知りました。土地や建物の評価では、航空写真や地図で位置や形状などを特定する工程があり、測量やGISが活用されています。


服部 たえ子 さん アジア航測株式会社
事業推進本部 社会インフラマネジメント事業部 事業推進室 主任技師

 大学は文学部地理学科でした。フィールドワークや地形の授業に興味がありました。 就職の時には、男女差がなく、かつ技術職で採用してくれる会社を選びました。会社見学に行った時に社員の人たちが気取らずリラックスした雰囲気だったので、自分には合っていると感じました。長年、地理情報システムで使うデータを作る部署にいました。環境省やNEDO、国交省などの仕事が多いので、自分が手がけた仕事をネット上で見ることができるのも楽しみです。森林や鉄道、最近では再生可能エネルギーに関連するものなどさまざまな主題図があります。インターネットサービス企業との仕事もあります。2年位前から、社外イベントの対応もしています。プロジェクト単位の受注が多い業界なので、プロジェクトマネージャをすることも多いですね。


森下 絵理子 さん アジア航測株式会社
社会インフラマネジメント事業部 社会インフラ技術部 東日本データソリューション課

 大学では農学部で主に森林について勉強していました。その中で森林リモートセンシングという分野に興味を持ちました。森林リモートセンシングでは測量した情報を解析するためにGISを使っていたため、GISで森林や環境の分野に携わることができる今の会社に入りました。入社してからは環境分野だけでなく道路や鉄道などのインフラ、都市計画などさまざまな分野の国土情報データを作成する仕事に携わっています。現在は環境分野の仕事が多く、風力発電などの再生可能エネルギーの発電所を開発するための場所選定に活用されている法規制や風速、コストなどのGISデータを作成しています。


小野 恵 さん 国際航業株式会社
公共コンサルタント事業部 空間サービス部 ファシリティマネジメントグループ 主任技師

 大学では地質学を勉強しました。就職氷河期で、会社説明会でも若干名しか採用しないという時代でした。現場に出てみたいという思いがありましたので、大学を出て地元の建設コンサル会社に入り実測及びCADを担当しました。その後、結婚を機に東京に戻り、縁があって今の会社に入社しました。普段の仕事は、道路の維持管理のためにMMSで測定したデータを加工したり、画像データをつくっています。MMSはモービルマッピングシステムもしくはモバイルマッピングシステムといって自動車に全方位のカメラやレーザー計測器を積んで、走行しながら周辺状況のデータを取得するものです。


廣瀬 葉子 さん 国際航業株式会社
センシング事業部 RSソリューション部 衛星情報グループ 担当部長

 大学で岩石鉱物学を専攻し、今の会社に就職して35年ほどになります。理系の女性技術職を採用する会社が少ない中、当社は当時から女性技術職を採用していました。今は人工衛星や航空機からのデータを使って調査をする仕事をしています。2017年に放映されたNHK総合テレビの「大捜索ドキュメント! 屋久島“伝説の超巨大杉”」では、リモートセンシング技術を活用して巨大杉の探索活動に協力しました。航空写真撮影や航空レーザー測量を行いデータ解析や分析をし、樹齢2千年を超える縄文杉よりも大きい杉を探すというプロジェクトでした。大変でしたが、最後は現地のガイドさんのお陰で巨大杉を発見することができました。


渡辺 美紀 さん 国際航業株式会社
公共コンサルタント事業部 システムサービス部 東日本ソリューショングループ

 大学では土木学科でランドスケープデザインを学び、地理情報システム(GIS)を使ったフィールドワークをしました。GISというキーワードと測量を学んでいたことがきっかけで、測量業界に就職しました。現在はGISを使った公共の業務支援を担当し、市町村の都市計画や建築、身近なところでは住居表示のシステム導入やデータ整備に携わっています。GISは地図をベースにいろいろな情報を管理するシステムです。そこからデータも作れますし分析もでき、自治体業務の効率化や住民の方々の利便性向上に役立っています。


田村 恵子 さん 中日本航空株式会社
調測測量事業本部 技術部 技術開発プロジェクト 主任

 小さい頃から自然や動物が好きで、学生時代は衛星画像を使った植生解析や、ツキノワグマのDNA分析などをしていました。今の会社を選んだ理由は、「調査測量」というキーワードに興味を持ったのと、面接の時に受けた印象が非常に和やかで、ここなら自分らしく働けるのではないか、と思ったためです。入社後は、ヘリ・ドローン等を用いて地形図や3Dモデルを作ったり、熱センサを搭載した飛行機で空からシカの調査をしたり、海や山へ現場調査へ行ったこともありました。最近では、ドローンアカデミーの測量コースの講師を務めたりと、多岐にわたる業務に携わっています。測量と一口に言っても様々な仕事があり、ライフスタイルに合わせて関わる分野を変えていける可能性があるこの業界は、男女問わず魅力的だと私は感じます。


笠 けやき さん 中日本航空株式会社
東京支社 調測事業部 営業課 主任

 学生時代は航空宇宙工学を専攻し、航空機エンジンの仕組みや物理学、天文学を主に勉強していました。東日本大震災がきっかけで、航空機を用いて空から災害復興ができる仕事に就きたいと思いこの業界に興味を持ちました。入社以来、営業職として航空レーザ測量やなどの提案営業をしています。専門知識がない状態での営業配属でしたので、現場作業は実際に現場に出ながら学び、基礎知識は測量士補の資格取得での勉強で学びました。災害対応はもちろん、昨年度は離島での航空レーザ測量業務に提案段階から携わり、現地対応も行いました。自分が提案した案件が成果として形になるととても嬉しい気持ちになります。今後は営業活動だけでなく、新人研修にも関わることで測量のことを広めていきたいと考えています。


鎌田 聖子 さん 株式会社パスコ
環境文化コンサルタント事業部 技術センター 総合技術監理室/文化財技術部 文化財技術二課

 大学で考古学を専攻し、卒業後は青年海外協力隊で考古学隊員として海外に2年ほど赴任した経験があります。今の会社に入り20年程経ちますが、発掘調査や出土した資料の整理、文化財管理システムや史跡整備等、ずっと文化財を扱う業務に従事しています。海外では、研究機関と一緒に測量担当として、エジプトでの遺跡調査やスリランカでの津波被害調査に参加しました。業務出張は多く、数か月〜1年位、発掘調査で野外に出ることもあります。 当社では、開発に伴う緊急発掘調査、出土品の整理・報告書作成、城や石垣・遺跡から出土する遺構や遺物の計測や写真撮影による記録保存、文化財GIS等関連システム作成や史跡整備・文化財活用支援等、文化財の総合的なコンサルタントとして業務を行っています。遺跡の調査では、記録保存の観点から、正確な計測と記録が大切です。そのため測量会社が調査の支援をすることも多いのです。


二木 あさ子 さん 株式会社パスコ
環境文化コンサルタント事業部 技術センター 環境技術部 環境技術三課

 大学時代は日本文学を勉強しましたが、自然環境分野に興味を持ち、卒業後に2年間専門学校へ行きました。その後今の会社に入り、最初は生物調査をしていました。現在は海やダムなど水の中の地形を測量する部署にいます。水の中の地形は、船に機器を取り付けて音波で計測しています。私は主に計測した海やダム湖の3次元データの解析をしています。例えば、数年分の計測データを比較して、ダムの砂がどこにどのくらい貯まっているのか、あるいは海岸侵食がどの程度進んでいるかといったことを解析しています。また港湾では船舶が航路を安全に航行できるよう、場所ごとに決められた水深を確保する必要がありますが、その維持管理のために実施する浚渫工事の際の計測もあります。計測したデータは工事の出来形管理に利用されたり、海図に反映されたりします。


東野 紫 さん 株式会社パスコ
東日本事業部 技術センター 道路情報部 道路情報一課

 大学での専攻は森林科学でしたが、研究活動の中で航空写真測量に触れたことがきっかけでこの業界に興味を持ちました。入社してからは主に道路台帳の作成や更新を担当しています。道路管理者は、法律で道路の基礎的な情報を地図上に示した道路台帳の作成が義務付けられており、管理道路の現状や改修などを的確に図面や集計数値に反映することが求められます。私たちは、航空写真測量・実測・車載写真測量等の計測技術を用いて現況を把握し適切な道路台帳の更新を行うことや、そこから得られた道路形状データを地理情報システムの骨格データとして活用することで、行政の道路管理を支援しています。


前回掲載は、建設物価2019年10月号(vol.44)
当会ホームページからもご覧になれます。
https://www.kensetu-bukka.or.jp/team-himawari-2019/5423/


チームひまわり 現場レポート

 実は、大学で地理学コースに在席していた私…勝手に縁を感じた「ソクジョの会」。
 測量といえば、道路であのカメラのような機械を覗いて作業をしている…そんなイメージしかなかったのですが、お話を聞いてびっくり。十人十色とはこのこと。測量業界にはこんなにもいろいろな仕事があるのかと驚かされました。日本国内にとどまらず、海外にも活躍の場がある。そして私たちの生活には欠かせない「地図」に関わっている皆さんのお話は本当に面白く興味深いものでした。皆さんのお話をお聞きして、測量・地理空間情報の分野は「自分に合った、さまざまな働きができる場である」といえるのではないかなと感じました。ご自身のお仕事の魅力について語られる皆さん、まぶしかったです!これからのますますのご活躍を陰ながら応援させていただきます。

宮川