建設物価調査会

建設物価2019年5月号

発注者と受注者がともに集まり、知識や技術向上を目指す
山梨県建設業協会青年部会「けんせつ小町甲斐」を訪ねて

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第40 回目は、山梨県建設業協会青年部会「けんせつ小町甲斐」の活動をご紹介します。


今回、お話を伺った 池谷実莉さん 前嶋世津子さん 遠藤尚美さん
今回、お話を伺った 池谷実莉さん 前嶋世津子さん 遠藤尚美さん

2017年3月に発足した「けんせつ小町甲斐」は、建設業で働く女性の活躍を後押ししようと、山梨県建設業協会青年部会が設立した組織です。当初は、代表を務める前嶋世津子さんと遠藤尚美さんを含めた4人でのスタートでした。現在は発注者である国土交通省や山梨県の職員と受注者である県内の建設会社女性技術者24人のメンバーで活動をしています。

同年11月には行政の関係者なども交えた「建設業に従事する女性の活力向上について語る会」が開催され、現場での課題や女性のネットワークの必要性などが語られました。

講習会や合同研修会を実施

女性技術者のスキルアップに力を入れ、2017年10月には建設業労働災害防止協会山梨県支部の女性パトロール隊と共同でショベルカーなどの小型車両系機械の資格取得のための特別講習会を受講。実技講習の様子はNHKや地元のテレビ局にも取り上げられ、女性が格好良く働くイメージをアピールできました。車両機械の資格取得は女性の活躍の場を広げることにつながります。

2018年8月には東京外環プロジェクト・女性技術者の会と合同現場研修会を行い、東京外環大泉JCT現場を点検・視察。9月には発注者女性技術職員との意見交換会やICT土木体験講座を実施。3次元計測やデータ作成など最先端の技術に触れることができました。12月には、中部横断自動車道の椿川橋、帯金第一トンネルを視察。メンバーからは、大きな現場を視察することで、建設の仕事に誇りがもてたといった意見が出たそうです。さまざまな女性技術者と意見交換を行うことで視野も広がります。

小型車両系機械実技講習の様子
小型車両系機械実技講習の様子
東京外環プロジェクト・女性技術者の会との合同現場研修会の様子
東京外環プロジェクト・女性技術者の会との合同現場研修会の様子

子どもたちに建設業の魅力を紹介

地元で開催される「建設まつり」に参加し、「けんせつ小町甲斐」の活動をPRするとともに子どもたちに建設業に関心を持ってもらうためにフォトスポットコーナーを設けました。ヘルメットや安全ベストを着用し、建設機械と写真撮影ができ、子どもたちに人気のコーナーに。保護者へもPRでき、大きな成果をあげました。

ヘルメットと誘導灯は子どもたちにも人気
ヘルメットと誘導灯は子どもたちにも人気

女性用作業服や保護具を提案

建設の現場で働く女性が使いやすいヘルメットや作業着のデザイン企画や安全帯などの保護具の展示や案内なども行ってきました。「女性が現場で格好良く」を運営サポートする山梨県建設業協会青年部会事務局長の山本憲一さんは「ロゴデザインや会のネーミングには山梨らしさを表現しました。ヘルメットや安全ベストにもロゴを入れて、小町甲斐の活動をPRしています」。

お揃いのヘルメットや安全ベストは、使いやすさやサイズ、色など細部までデザインが検討されました。山梨県の県花・フジザクラと風にたなびく小町の髪をモチーフにしたおしゃれなロゴデザイン。
建設の現場で働く女性が使いやすいヘルメット

建設業に入ったきっかけは?

メンバーの年齢もバックグラウンドもさまざま。取材にご協力いただいた3人に建設業に入ったきっかけやお仕事についてうかがいました。

前嶋世津子さん (昭和建設株式会社)

建設業に興味を持ったのは不動産会社で宅地開発をしていた時です。折衝や調整業務は大変でしたが、工事が進んでいくに従い、何もないところに住宅が建ち、街ができていくのを目の当たりにして建設業のすばらしさを実感しました。昭和建設に転職し、現場で施工管理をしています。転職当時は、職場には女性が1人だけだったので、女性だからといわれないように頑張ってきました。今では業界に女性が増えてきましたが、女性のネットワークをつくり、技術を高め、また建設業で女性が長く働ける仕事の幅や可能性を広げていきたいと思います。

遠藤尚美さん (株式会社早野組)

建設会社で現場事務のパートを始めたことが建設業に入ったきっかけです。繁忙期に現場でお手伝いする機会があり、現場の仕事に興味を持ち、技術者になりたいと思いました。勤務先の早野組社長(現会長)の後押しもあり、土木施工管理技士1級を取得し、道路舗装の施工管理をしてきました。現在は現場事務をしています。会社には資料も揃っていますし、建設のプロばかりですので、試験勉強には最高の環境でした。子どもたちも進んで家事を手伝うなど協力してくれました。成人した長男は東京で建設業に就いています。代表の前嶋さんをサポートしながら、若い女性技術者が気軽に相談できる環境をつくっていきたいと思います。

池谷実莉さん (株式会社中村建設)

子どもの頃から道路や橋をつくる仕事に憧れていて工業高校の土木科に進学しました。卒業後に中村建設に入社し、今年4月で1年です。入社当初はわからないことばかりで、先輩にいろいろ教えてもらいました。現場ではいろいろな会社の方との交流があり、充実した毎日です。最近では施工管理を任せてもらえるようになり達成感があります。これからも頑張って資格取得を目指していきます。職場の女性技術者は私1人だけなので、いろいろな年代や立場の女性技術者が集まる小町甲斐の活動は、楽しく、勉強になります。建設業の魅力をたくさんの人に知ってもらいたいです。

オフショット
取材当日、山梨県の建設業界のPR動画の撮影が行われていました。前嶋さんと池谷さんセリフの確認中です! レフ板は青年部会の方がお手伝い! どんな仕上がりになるか楽しみです。

チームひまわり 現場レポート

遠藤さんは子育て中の事務のパートから、土木の資格を取得し施工管理をされてきたという異色の経歴の持ち主。家事・子育て・仕事の両立は本当に大変だったと思いますが、楽しく仕事をしているお母さんの姿を見て育ったお子さん達は自然と建設業に興味を持っていったとのこと。
 前嶋さんは現在、子育て真っ最中。どうすれば両立できるのか、日々奮闘されています。
 

 チームひまわり 現場レポート 宮川

子どもの頃から建設業界に憧れをもち、念願叶って現場で仕事をしている池谷さんの目は、毎日が楽しい! と輝いていました。 いろいろな世代・立場の方たちが集まる、けんせつ小町甲斐。さまざまな経験をされている方たちがつながることで、悩み相談・情報共有などができる貴重な場となっていくことと思います。

けんせつ小町甲斐の特徴は、青年部の事務局も一緒になって活動を盛り上げているところ。楽しいことが大好きなアイディアマンの山本さんがメンバーを盛り上げている姿が印象的でした。
 きっかけは「女性活躍」。でも山梨県の建設業界全体を盛り上げるため、男女関係なく取り組まれている姿に一体感を感じました。
 これからどんなアイディアが飛び出すのか! けんせつ小町甲斐から目が離せません!

宮川