建設物価調査会

建設物価2017年3月号

『週休2日制確保モデル工事』のアンケート結果について(国土交通省 関東地方整備局 企画部 技術管理課)

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第18回目は、国土交通省 関東地方整備局が行ったアンケート調査結果を紹介します。


建設業界では、担い手不足が懸念され、若手技術者の確保・育成を中心とした将来の担い手確保が重要な課題であり、建設現場における『週休2日制』の確保も課題の一つとなっています。

関東地方整備局では、平成27年度から『週休2日制確保モデル工事』(以下、『モデル工事』)を実施し、週休2日制確保に向けた受発注者の課題を把握するため、受注者に対して、アンケート調査を行い、12工事(対象工事は15工事)から回答があり、調査結果をとりまとめました。

1.『週休2日制確保モデル工事』について

週休2日の取得については、様々な課題があり、これらの課題を把握するために、現在、様々な発注機関においてモデル工事等を行っています。

国土交通省の各地方整備局等においても、全国的に『モデル工事』に取り組んでおり、入札段階において『モデル工事』を実施する企業を評価するものや工事成績評定において休暇の取得状況に応じて加点・減点するもの、成績等の加点・減点を一切しないものなど、様々なモデルを試行しています。

2.『モデル工事』のアンケート調査概要について

平成27年度の『モデル工事』は、 15現場で実施しています。

アンケート調査は、平成28年1月に発注者(監督員)より請負者の現場担当者(現場代理人等)にアンケート調査票を配布し、調査への協力を求め、6月末までに回答のあった12工事について、集計を行い中間報告としてとりまとめています。

関東地方整備局版『週休2日制確保モデル工事』の概要

【 発注段階】

●発注者が指定する工事において、『週休2日制』の試行工事を実施。
●『週休2日制』については、以下の通りとし発注者が指定。
 a)発注者が、①~③のいずれか1つを指定
 b)受注者が、①~③を選択

  1. 一週間のうち、土・日曜日の休日を確保
  2. 一週間のうち、2日間の休日を確保(土、日曜日でなくても可とする。)
  3. 月単位で、4週8休を確保

●主たる工種(工期を設定する上でのクリティカルとなる工種)について、工期設定の根拠となる作業日数を『見積参考資料』において明示。
●総合評価での評価はしない。

【 施工段階】

●休暇の「取得計画書」を受注者が作成。

【 完了段階】

●休暇の取得状況を確認するための「月報(又は週報)」を受注者が提出。なお、休暇の取得計画が達成できなかった場合でもペナルティは課さない。

3.『モデル工事』のアンケート調査結果について

『モデル工事』の受注者に対して、①現場等での就労環境について、②週休2日制を実施した場合について、③『モデル工事』の達成状況について、④週休2日制を達成するための要因について、⑤週休2日制を確保するための方策について、アンケート調査を行いました。

①現場等での就労環境について (図-1)

従前(『モデル工事』着手前)より、計画的に週休2日(土曜、日曜日)、週休2日(土曜、日曜日に限らず)、4週8休を取得できていると約4割が回答しています。

一方で、週休2日を取得できない理由としては、「作業員等が土曜日等の作業を望んでいる(」10件)、「当初から休日作業を見込んで工程を計画(」7件)、「予期せぬ雨天等により工期が不足(」6件)などの意見がありました(複数回答)。

図1

② 週休2日制を実施した場合について(図-2)

「女性や若手の入職者が増える」又は「若手は増える」と約8割が回答しています。

一方で、「工事の遅延」(9件)、「残業の増加(」6件)「、給料の減少」(1件)といった不安についても回答がありました(複数回答)。

図2

③試行工事の達成状況について(図-3)

12工事のうち、約7割(8工事)の現場で、週休2日が取得できていました。

残る約3割(4工事)のうち2工事については、週休2日が7割以上取得できていました。

1工事については、週休2日が取得できていませんでした。

図3

④ 週休2日制を達成するための要因について(図-4)

週休2日制がうまくいっている

要因として、「現場を完全に閉所している(」7件)「、現場の意識が高い」(6件)、「残業を増やしての対応」(5件)の順となっているが、「発注者からの指導(」3件)といった回答もありました(複数回答)。

一方で、達成できていない要因としては、「作業員が休みを求めない」、「工期が厳しい」、「外部との調整・協議に時間を要した」、「現場の意識が低い」といった回答となっています。

図4

⑤ 週休2日制を確保するための方策について(図-5)

週休2日制を確保する上で、発注者に求めることを聞いたところ、「余裕を持った工期の設定」、「業界全体の意識改革」、「工事費のアップ」、「発注者からの指導」といった回答が多く寄せられました。

図5

4.今後の週休2日制確保モデル工事について

関東地方整備局では、今後もモデル工事の実施等により、若手や女性技術者が建設業に入職しやすい環境を整備するよう努めてまいります。

具体的には、平成28年度の「週休2日制確保モデル工事」において、以下のような取組を進めています。

① 平成28年度については、対象工種を従前の「一般土木」から「全ての工種」に拡大するとともに、工事件数を拡大して『モデル工事』を継続しています。

② さらに、平成28年9月に公表した「“地域インフラ”サポートプラン関東2016」*1において、休暇が取れる現場を目指し、新たに発注する「週休2日制確保モデル工事」において、「工事工程表の開示*2」をセットで試行することとしました。

③「工事工程の共有の試行工事」や「余裕期間制度」を活用する工事と重複して試行し、受注者へのアンケート調査を行うことで効果を確認することにしています。

*1:“地域インフラ”サポートプラン関東2016;関東地方整備局では、建設業が取り組む担い手確保と建設現場の生産性の向上の支援策をとりまとめ、公表を行いました(平成28年9月)。このプランでは、地域の安全と成長を下支えする建設業を支援するため、 3つの重点項目(担い手の確保・育成、生産性の向上、広報活動)を設定し、12の取組を進めることとしております。
http://www.ktr.mlit.go.jp/gijyutu/index00000023.html

*2:工事工程表の開示;週休2日の確保を目指すため、入札公告の際に、発注者が算定した工期や関係機関との調整、住民合意等の進捗状況を踏まえた工事工程表を添付する試行工事で、平成28年度から開始しています。