建設物価調査会

建設物価2022年3月号

災害から道路を守る防災のパイオニア
日本サミコン株式会社を訪ねて

 1973年、新潟の地で設立された日本サミコン株式会社は、道路防災の専門メーカーです。山間部における落石や雪崩などの自然災害から道路を守る特殊なプレキャスト製品「ロックシェッド」や「スノーシェッド」など、高い技術と類を見ない専門性を持った主力製品を数多く作っています。今回は、そんな同社の「ニッチ」さに魅せられて入社した女性技術者の本多美由貴さんにインタビューをさせていただきました。


入社したきっかけ

 高校時代は元々興味のあった農業や自然環境に関する勉強をしており、その延長で大学では農業土木の道へと進みました。森林工学を専攻し、演習林で樹木の伐採や、ハーネスを着用して崖の登はんといった実習をしていました。卒業後は、大学で身に付けた森林に関する知識を活かした仕事がしたいと思っていましたが、それらを活用できる民間企業はほとんどないことを知りました。
一方で、土木関連の民間企業はゼネコンやメーカー、コンサルと選択肢が非常に多いことが分かりました。地元新潟に貢献したいとの強い想いもあったので、日本全国の山間部で事業展開をしている新潟創業の道路防災製品の専門メーカーである日本サミコンへ就職することを決めました。

本多 美由貴さん

日本サミコンが扱っている製品は非常にオリジナリティが高く、他社では製造していないようなモノが多いのが特徴です。特にロックシェッドやスノーシェッドなど、主力製品の特殊性が日本サミコンの強みであると感じています。一般的なニーズだけでなく、特殊なニーズにも応えられることに面白味を感じていますし、それが仕事へのやりがいになっています。

現在の仕事

 現在は設計開発課に所属しており、ドローンによって撮影された画像データを基に、点群データによる3Dマップを作成する仕事をしています。入社するまでは、このような先進的なIT技術が建設業界に導入されているということを知らなかったので、とても驚きました。実際に、大学で同じような技術について学んでいたので、その知識を活かせることが嬉しいです。

 まだ入社して間もないこともあり、仕事を覚えるために現場に出向くこともあります。大学時代のように山に分け入って、落石の発生源となり得る場所へと現地踏査することもあります。このような毎日を送っている私について、周りの友人や知人からは大変な仕事をしていると見られているようですが、子供の頃から思い描いていた「自然を相手にする仕事」に携わることができて、毎日がとても充実しています。

自然に囲まれて仕事をするのが夢でした!
3Dデータを作るのが仕事です

将来の目標

 建設業と一口に言っても、その仕事は多岐にわたっていますので、知識を習得し、技術を磨いて、自分の中に蓄積させていきたいと思っています。

新しいことにも積極的にチャレンジして、仕事の幅を広げていくことも重要だと思っています。自分が何をやりたいのかという明確なビジョンを持つことによって、目標が見つけられると思うので、様々な仕事に関わっていくなかで自分が本当にやりたいことを見つけていきたいです。

 技術革新により市場が目まぐるしく変化するなか、顧客ニーズに応えた日本サミコンでしか作れないオリジナリティ溢れる商品を自分の手で開発・設計し、そして自分自身で現場に設置することが、私の夢であり、目標です。可能性は無限大です!


情報技術が得意な若者こそ建設業界へ

日本サミコン株式会社 管理本部 総務部長 石崎 実さん

 今の建設業界には、最新のICTをしっかりと取り入れ、根付かせることが重要だと考えています。特にシェッド類は山間部の危険な場所に設置することが多く、施工現場の状況を正確に把握する必要があります。そのためにドローンを飛ばして現場周辺の地形データを取得し、3Dマップを作って施工のシミュレーションをしています。経験豊富な職人の知識や技術があるからこそ施工が可能な現場も数多く存在しますが、一方で、最新のテクノロジーを用いた若い世代が得意とする情報技術も、これからの建設業には必要です。アナログ技術とデジタル技術を上手く組み合わせて、より安全で効率良く施工することが重要になってきていると思います。

 また、建設業界は男社会という考えはもう古いと肌で感じています。今の機械は女性でも扱えるようになっていますし、性別による差は少なくなってきているのではないでしょうか。今後、女性ならではの視点によって、今までにない新しい商品やサービスが生み出されていくことに期待しています。
 これからの若い世代には、是非、建設業界の門を叩いて欲しいと思っています。


チームひまわり 現場レポート

 日本サミコンと言えば、オリジナリティのある道路防災製品の専門メーカーとして、道路交通の安全の守り人として知られています。

 今回、インタビューさせていただいた本多さんは、ハキハキとした受け答えと明るい笑顔が素敵な若手技術者という印象でしたが、インタビュー後、普段の執務の様子を撮影するためにご自身のデスクに座っていただくと、先程のにこやかな雰囲気から一転、厳しい眼差しでPC画面を見つめる土木技術者の顔になっていました。入社1年目ながらも、道路の安全を守るという使命を常に心に持ち続けている様子に感銘を受けました。

伊沢