女性社員のパイオニアが土台を作り、後輩たちが女性活躍の環境を作る三機工業株式会社を訪ねて
取材に応じてくださったのは、三機工業㈱、管理本部 人事部 人事課長の小沢智子さん、環境システム事業部 計画部 計画課 主任 田中裕布子さん、環境システム事業部 水エンジニアリング1部 水エンジニアリング2課 栗原 萌さんです。同社は関東大震災から1年半後の1925年(大正14年)、復興を目指して創立され、母体は旧三井物産㈱の機械部です。事業は空気調和、給排水・衛生、電気、情報通信、オフィス移転等の建築設備事業、搬送システム、コンベヤ等の機械システム事業、上下水道処理設備、廃棄物処理施設等の環境システム事業など、幅広い領域に及んでいます。
長時間労働を改善するためのプロジェクトを立ち上げる
同社では最近「スマイルプロジェクト」という取り組みを行っています。小沢課長は当プロジェクトについて「当社の経営課題である長時間労働を解消するため、2015年7月に社長をリーダーとして立ち上げ、全社横断的に行っているプロジェクトです。定期的な会議をはじめ、事業部門ごとに、課題分析や基本方針立案を検討する部会の開催、従業員への周知活動などを行い、労働環境の改善を図っています。」とコメントいただきました。小沢課長も率先して仕事の効率化や時間短縮を行っています。
環境システム事業部では女性技術者を続けて採用
環境システム事業部に所属する田中さんは同事業部、女性第一号の技術者です。入社して4年目、下水道関連装置を扱う専門部署で、メーカー色の強い業務を3年ほど担当した後、現在は計画課に籍を移して下水全般の設備に関する技術提案を行っています。「下水処理装置は、基本設計からスタートし、導入が決定するまで最長7年ほどを要します。新人の時に提案してきたことが最近ようやく実を結び、達成感を味わっています。また、それぞれの処理場の環境に合った本当に良い製品だということを丁寧に説明していくことを心がけながら仕事に取り組んでいます。」
田中さんの二年下の後輩が栗原さんです。「小学生の時から環境保全の仕事を目標にしていました。大学では水に限らず資源、水処理、環境汚染、二酸化炭素などについて学びましたが、微生物を使用して水処理をする研究が一番面白かったので、水処理の仕事ができる当社を選択しました。また、環境システム事業部には、田中さん、私、後輩の3人の女性技術者がいるのですが、田中さんが女性技術者として優秀だったので、会社も続けて女性を採用しようということになったと思います。田中さんがしっかり土台を作ってくれたので後に続く私たちも安心して仕事ができます。」
男性社員がやさしい職場
小沢課長は「同性として、女性が増えることは嬉しいことですが、女性だから、男性だからということではなく、男女問わず、優秀な人材を採用しています。当社は男性が多い職場ですが、女性に対しては本当にやさしいと感じています。また、平成29年度は、事務系を含めて入社予定94名のうち20名の女性が入社します。その中でも総合職が多くなっている傾向です。当社は、これまで、建築設備、機械システム、環境システムという男性中心の中で育児・介護については法定どおりの処遇となっておりましたが、従業員の生の声を取り入れ、長時間労働からの脱却をはじめ、さまざまな改革を進めており、今後も更に推進してまいります。」
「入社したばかりのときは、男性社員は腫物にさわるように、やさしく扱ってくれました(笑)。女性と仕事をするのが初めてなので、どうやって接したらいいのかわからなかったみたいです。」(田中さん)
「現場に行くと“女性用トイレ”の札をわざわざ私のために買っておいてくださったり、事務所の一角を区切って、着替えができるよう配慮していただくなど相当気を使ってもらっています。また、現場では力仕事もあり、男性と区別されるのは嫌なので自分でやろうとするのですが、力不足で思うようにいきません。こんな時には男の人に甘えていいのかなとも思います。」(栗原さん)
下水道への抵抗はありません
“なぜ女性が過酷な下水道の仕を?”と言われることはありませんか? 「下水道の仕事は人々が敬遠するというイメージがありますが、大学で下水を取扱う研究室に在席していたので抵抗はまったくありません。仕事の内容を話すと友人に“そんなことをやっているの!?”と驚かれることもあります。下水道のにおいは大丈夫です(笑)。」(田中さん)
「私も下水道にまったく抵抗がありません。また、今私が取り組んでいるのは下水処理の設計ですが、下水道全体から見るとごくごく一部にしかすぎません。そのため、今は一つひとつのことを積み上げて勉強していかなければならない時期だと思っています。」(栗原さん)
これからの目標は?
「女性活躍推進行動計画に基づいて、女性の勤続年数を伸ばしたいと思っています。そのためにはまず長時間労働をなくすことですね。女性のことを考えていけば、男性にもつながっていきます。また、さらに高い活躍意識を持った女性も多いことから、管理職を対象としたダイバーシティ研修等を通じて、男性側の意識を変えています。男性、女性にかかわらず、働きやすい環境をつくっていくことが私の現在の使命だと思っています。」(小沢課長)
「現在計画部に籍を置いていますが、ここでも昨年まで在席していた部署で取扱っていた仕事を9割近くやっています。下水処理装置のことならおおよそのことは理解していますが、キャリアアップのために、ほかの仕事も増やしてほしいと思っています。また、結婚して、出産しても仕事を続けたいと思っています。」(田中さん)
「去年、初めて図面を書いて、平面だったものが大きな立体になったことで達成感を味わうことができました。また、最近は上司から言われて考えるのではなく、自分の頭で考えていくような設計をしています。これからのキャリアアップも自分次第だと思っています。」(栗原さん)
●最後にみなさんからひと言
「女子会で盛り上がりたいので、事務系、技術系問わず女子社員が増えてほしいですね。」(笑)
チームひまわり 現場レポート
今回は下水道工事の先端で働く女性にインタビューをしてきました。入社4年目の田中さん、 2年目の栗原さんが、「自分が入社当時に提案した設計が実際に形になったときに感動した。これからもいろんなことを吸収して自分の力で現場を作りたい。」と、とても楽しそうに仕事の話をしているのが印象的で、男性に負けない頼もしさを感じました。下水道はマイナスなイメージになりがちな分野ですが、とてもやりがいがあり、面白い仕事だとひしひしと伝わってきました。
小沢さんからは、スマイルプロジェクトなどの取り組みや会社全体で組織改革を行いながら、女性を応援したいというお話を伺いました。下水道というジャンルで働く女性はまだ少ないですが、これからどんどん増えていけるようになるといいなと思いました。私も下水道資材の価格調査を担当しており、一緒に下水道事業に貢献できるように頑張ります。
村田