海洋土木でも女性技術者が活躍「平成28年度新海面処分場しゅんせつ土砂仮置・送泥(埋立)工事(その1)」を訪ねて
「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」
当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第17回目は、五洋建設株式会社の女性技術者が活躍する「平成28年度新海面処分場しゅんせつ土砂仮置・送泥(埋立)工事(その1)」を紹介します。
しゅんせつ土砂の受け入れと送泥を行う現場
五洋建設の入社1年目、結城愛実(ゆうき まなみ)さんが働く、東京湾「平成28年度新海面処分場しゅんせつ土砂仮置・送泥(埋立)工事(その1)」の現場を訪ねました。
東京内の港湾工事や河川工事で発生したしゅんせつ土砂を、汚濁防止枠船「てんゆう」で受け入れ、新海面処分場のGブロックに送泥し埋立てる工事をしています。
しゅんせつ土砂は船底が開くタイプ(底開式)の土運船により運ばれ、「てんゆう」のポケット内へ落として仮置きします。「てんゆう」の船底部には濁り拡散防止用のカーテンが取付けられており、周辺環境に配慮した工事を行っています。当日の土砂の受入が終了した後、「てんゆう」のポケット内に仮置された土砂をポンプで吸上げ、排砂管を通じ、新海面処分場の埋立地Gブロックへ送泥します。
新海面処分場に停船する「てんゆう」で朝礼
結城さんは、有明工事事務所から車で新海面処分場に移動しそこから交通船で「てんゆう」へ乗船します。
朝8:00には「てんゆう」に乗船し、船員とともに、ラジオ体操や朝礼に参加し、海上工事の現場の様子を確認しています。
その後、有明工事事務所に戻り、必要書類の作成や打合せ、モニターで「てんゆう」の監視作業などを行います。
「先日、立ち入り禁止区域のブイを移設するため、潜水士船の潜水士に指示を出しました。海は、陸上の工事と違い完成したものが目に見えないことが多いので、新しいブイがきちんと決められた場所に移設された時は、技術者として達成感を味わうことができました」。
結城さんの上司である小林豊所長は「、私自身は女性技術者と一緒に仕事をするのは初めてですが、フレッシュな結城さんがいると現場の雰囲気も和やかです」。
来年度は10名以上の土木女性技術者が入社予定
結城さんが配属されている有明工事事務所は、更衣室を兼ねた畳敷きの休憩室、清潔な女性トイレなど女性を受け入れやすい環境をいち早く整えました。そのため、昨年、一昨年と、結城さんの先輩にあたる女性技術者も配属されていました。
同社の土木設計部担当課長・大島香織さんは「次年度、当社では10名以上の女性土木技術職が入社する予定です。そのため、有明工事事務所のように、他の土木工事の現場でも女性を受け入れてもらうための環境整備をしています」。
目の前の仕事を大切にしたい
「祖父が土木職だったという影響もありますが、大学入学前に東日本大震災を経験し、復興のために様々な人たちが助け合っていたことに触れ、私も土木を通じて人の役に立つ仕事をしたいと考えて土木学科を選択しました。また、大学のゼミでは沿岸環境研究室に所属し、卒業後は壮大な海洋工事に携わりたいと思っていました。大学のゼミの教授が当社OBということもあり、迷いや不安もなく海洋工事を多数行っている当社を希望しました」。
最後に目標などについて伺いました。
「事務所に女性の内勤の方がいらっしゃるので、仕事などで困った時には相談しています。今の現場は肉体的な負担が少ないので、女性も働きやすい環境だと思います」。
「来年は多数の女性技術者が入ってくるので、どういう後輩が入社してくるのか楽しみにしています。私自身は、中央防波堤の事務所に異動になりますが、入社してすぐに所属していた事務所なので不安はありません。仕事は、海から少し離れた陸上の土砂を運んでくるダンプの管理となります。今後の目標はあまり考えていないのですが、今は目の前の仕事が無事終えられるように、仕事をこなしていくことが 大 切だと思っています」。
五洋建設の取り組み
五洋建設では、土木職、建築職、事務職の女性総合職5名が主体メンバーとなり、全社女性技術者からの意見を元に活動を行っている「けんせつ小町推進WG」と、育児中の一般職・総合職の女性職員10名が主体メンバーとなり、育児中の女性の個々の悩みや問題を共有し解決策を話しあう「育児ネットワーク」の2つのワーキンググループを立ち上げています。
「けんせつ小町推進WG」では、女性総合職の職場環境アンケートの実施、女性職員同士や管理部門との意見交換会、女性配属現場のパトロール等を実施しています。これらの結果を元に、女性が現場配属される際のチェックリストを作成し、各部門と情報の共有を行っています。今年度は女性技術職から要望の多かった女性用作業服を新設しましたが、来年度は、作業性を考慮した女性用の作業服を男性用に水平展開する予定です。
「育児ネットワーク」では、育休経験者の意見を取り入れた「産休・育休復帰支援面談シート」を導入しました。面談により、上司の意識の統一化、上司との育児状況の共有化が図れ、安心して働ける環境を整えやすくなりました。また、育児をテーマとしたワークライフバランスイベントなども開催しています。
来年度は、女性の新入社員が多く入社するので、女性が配属された現場へのフォローをWGでも重点的に実施していくとともに、女性の繋がりを形成する場を提供する活動も実施したいと考えています。
チームひまわり 現場レポート
今回の舞台は海上、東京港しゅんせつ工事の現場を訪ねました。五洋建設の結城さんは新入社員にもかかわらず、土砂送泥船「てんゆう」で土砂受入の現場監督として奮闘していらっしゃいました。東日本大震災を契機に人の役に立てる仕事をしたいと志し、五洋建設に入社したという結城さん。そんな結城さんが現場の指揮をとることで現場の雰囲気が明るく穏やかになっていくようでした。
五洋建設には女性ならではの疑問・課題を共有して解決策を話し合う社員コミュニティがあったり、女性社員のアイディアを取り入れた快適な作業服を製作されていたり、工事勤務中に育児などライフイベントを迎える場合には内勤でキャリア形成を進めるなど、女性社員をサポートする独自の工夫があるそうです。
今回ご協力いただいた土木設計部の大島さんをはじめ、取材に応じてくださった有明工事事務所の皆さま、ご協力ありがとうございました。次回も是非ご覧ください。
西方