建設物価調査会

建設物価2016年4月号

ヒョウ柄のクレーンが現場を駆けまわる!(有)カツマタ 勝又社長にインタビュー ((有)カツマタ)

ヒョウ柄重機

三重県伊勢市に、昨年で創業20年を迎えたクレーン会社 有限会社カツマタがあります。この会社を一代で築き上げた勝又ひとみ社長にインタビューを行いました。

きっかけはママ友からのお誘い

結婚して5年間専業主婦をしていたころ、娘の幼稚園で知り合ったママ友に誘われて近所の建設会社でパートとして働くことになりました。その会社に偶然クレーン車があったことがクレーンに触れる最初のきっかけでした。その後その会社でクレーン部を任され、何とか一部署として成り立たせようと奮闘。人員不足だったため、少しでも助けになるよう自身でも運転の練習を始め、面白くなったので免許をこっそり取得、ちょこちょこと乗るように…。そうしているうちに、当時仕事を受注していた会社の方の勧めもあり、ついに独立を果たしました。

勝又ひとみ社長

専業主婦から180度変わった生活

現在は経営業を主体とし、現場に出る機会はほとんどありませんが、創業当初は自身もクレーンのオペレーターとして働く日々を送っていました。

専業主婦から、当時はまだ珍しかった携帯電話を持ちながら早朝から夜遅くまで駆け回るというハードな環境に様変わり。クレーンに乗りながら、修理屋やトレーラーの手配、事務作業まで一人でこなしていました。

また、クレーン作業は、控えの人員がおらず、クレーン一台に対してあくまで一人のオペレーターが付く仕事であり、家族が不慮の事故に遭ってもすぐに駆けつけることができない場合があることは覚悟しなければなりませんでいた。実際、娘が熱を出したという連絡を受けても、クレーンに乗車中で帰ることができなかったことや、娘が自転車で事故に遭い、夜間救急で病院に行ったらそのまま入院したということもありました。

仕事中心の生活に変わったことで、主婦業があまりできず、家族そろってゆっくり食事をする時間もとれないほどになっていました。そんなときに救われたのが、主婦業や子育てを引き受けてくれた主人と両親という『家族』の存在でした。

自分自身は、家族のサポートによって仕事と主婦の両立で苦しむことは少なかったように思いますが、家庭環境によっては、残業や夜勤、業者との付き合いをしながら子育てをすることは女性にとってかなり負担が大きいことです。一日の拘束時間が長いと、その間子供を預けられる身近な人や託児施設の充実が必要であるとともに、長期出張の場合は、短期間で転園可能な保育園があるとより働きやすくなるのではないかと思います。

現場作業での苦労話は数知れず

現場作業においては、軽トラで大きなバケットを運搬中に道で落としてしまい、通行中の女性に助けられたこと、クレーンのエンジン故障や運搬中に事故に遭遇し立ち往生したこともあります。そんな時でも、当時は全て自分一人で処理しなければなりませんでした。現在はそういった現場作業員のトラブルに対し、事務所で私が対応や処理を行いサポートしています。

早朝や深夜の作業でも一人現場に取り残され、他の作業員に絡まれたり、苦情を寄せられたりしたこともあります。腕力があまり必要ではない仕事なので、力で男性と競うことはありませんでしたが、仕事の面において「やはり女性だから…」と根拠なく下に見られることも多かったように思います。

設備面での苦労は、建設現場は男性主体のため女性の使えるトイレは限られており、不便な場所にある時もあれば、近くの民家に借りに行ったことも。現場で限られた条件があるので、あまり神経質ではいられないという実態がありました。そのため、現場に頼るばかりではなく、着替え用のワンタッチテントや携帯トイレを自ら用意するといった工夫は、今も行っています。

操縦するクレーン車にも改善の余地あり

レーンのオペレーターは、基本的に操縦室での作業となるため、建設作業の中でも比較的きれいな作業環境の方ですが、改善余地はまだあります。冷暖房といった空調設備を始め、乗用車では一般的となった操作室のガラスのUVカット仕様、安全面では、アラウンドビュー・バックモニター、障害物センサーを設置することで、キツイ・汚い・危険という3Kのイメージを軽減し、現場での作業性向上に寄与することができるのではないかと考えます。

積極的な雇用に取り組む

同業の女性経営者のなかには、同性として女性の弱い部分を知っているので、男性経営者以上に女性の雇用に消極的になりがちな方もいるようです。それでも当社は、クレーンのオペレーターは、体力をつければ女性でも十分働ける職種だと考え、高校の進路指導の教諭を訪問し、建設業界の魅力を積極的に伝えています。その結果、4月には初の女性作業員の入社が決まりました!

また、これは「あったらいいな」と思っていることですが、ゲームセンターにクレーン操作を疑似体験できるようなゲームがあったら、よりクレーン車を身近に感じ、クレーンの操作に興味を持つ子供が増えて、長期的な視点ではありますが雇用につながるのではないかと考えます。

先駆者として伝えたいこと

「女性が輝く社会」とは、他国や国内の他産業と比較すれば、本当は特別なことではないはずです。ただ建設業において、社会的に女性が働くことに寛容になったことはありがたいと思いますし、真の実力主義でよいと思います。

働くことが平等だというのなら、残業も平等にすることになるし、責任も同じだけ負うことになります。この前提を理解した上で、女性だからと自分を甘やかさない強い意識が必要となるでしょう。

女性は(人にもよるとは思いますが)、粘り強さ、気配り、心遣いは男性に勝っているのではないかと思います。その強みと意識を持って、その時その時の自分の人生に悔いのない選択をしてほしいです。専門的な技術や知識を備えていれば、少しばかりお休みしても、また自分の努力次第で復帰はできるものです。利用できる限りの周りの人に、家族に、助けを求めても構いません。

「自分にとって今一番は何か」を考えて仕事に打ち込んでほしいと思います。


チームひまわり 現場レポート

穏やかな話しぶりからは想像できないような、厳しい男性社会の中でクレーンのオペレーターとして働いてきた勝又社長。現在の建設現場の中で働く女性技術者の姿は何度か見てきましたが、社長が現業を始めた当初の状況は、まさに3Kと呼ばれるものでした。

稲村さん

そのご自分の体験を活かし、若手を育てていきたいという強い想いが、3時間近いインタビューの中で、ひしひしと伝わってきました。また、相手(=発注者・元請業者)に必要なものを求めるばかりでなく、自分で改善できるものは変えて導入していくという積極的な姿勢に、建設業に限らずあらゆる仕事で重要なことだと再認識し、身の引き締まる思いでした。 次号もぜひご覧ください。

稲村