建設物価調査会

建設物価2016年4月号

「ダイバーシティ」の取り組みも積極的に行う鉄建建設(株) 「新宿歩行者専用道第2号線Ⅲ期−1工区整備工事(26三−主4青梅街道)その2」の現場を訪ねて

休憩室はとっても乙女チック!!

「新宿歩行者専用道第2号線Ⅲ 期-1工区整備工事(26三-主4青梅街道)その2」工事は、大規模な開削工事により東京中心部の新宿に地下歩行者専用道を築造するとともに、下水道管路の撤去、残置される下水道本管及び光ファイバーケーブルの防護設置なども行います。工事の完了は平成29年1月31日を予定しています。

工事事務所を決める際には、男女別にトイレが分かれている建物を探すなど最初から女性を意識した現場づくりを行っています。女性職員だけではなく、工事の見学会などに参加する地元女性にも配慮した選択です。

工事事務所内の一画にはパーテーションで区切った女性専用の休憩室を設けています。

この休憩室には、ラグが敷かれ、加湿器や季節ごとの飾りつけなども施されており、1人暮らしのワンルームマンションのように居心地の良い空間となっています。女性スタッフの技術職吉野さんと事務職中野さんが、所長に一任されてインテリアやレイアウトを担当しました。

吉野さんは「夜勤で疲れた時には身体を休められる快適なスペースです」。中野さんは「必要なものは、自由に購入して良いと所長に任せられたので可愛らしい空間ができあがり満足しています」

佐伯篤史所長は「男性の私が事務所の環境を考えるとどうしても男性目線になってしまいがちなため、彼女たちの好きなように休憩室の整備を任せました。その結果、男性の僕たちが想像もできないほど女性らしい休憩室になり驚いています」

手作りのインテリアなどがちりばめられた休憩室
手作りのインテリアなどがちりばめられた休憩室
向かって右から野本由美子さん、中野しおりさん、吉野早耶さん、岩川実郷さん、和田郁子さん
向かって右から野本由美子さん、中野しおりさん、吉野早耶さん、岩川実郷さん、和田郁子さん

地元への好感度も高い女性スタッフ

工事概要が書かれた地元へのパンフレットの配布は、吉野さんと中野さんが担当しています。近隣の飲食店などを訪ねて事業の説明を行っていますが、好感度も高く、地元との良好な関係が築かれています。

「新宿歩行者専用道第2号線Ⅲ期-1工区整備工事(26三-主4青梅街道)その2」の現場
「新宿歩行者専用道第2号線Ⅲ期-1工区整備工事(26三-主4青梅街道)その2」の現場

「お昼ご飯を飲食店へ食べに行くと、顔なじみになった地元の方が “来てくれたのね”と気軽に声をかけてくれたりします。現場に出ても、作業員の方やトラックの運転手さんがすぐに顔を覚えてくれて、挨拶をしてくれたり、あめをくれたり…。女性として得をしていることも多いような気がしています(」吉野さん、中野さん)

現場は22時から朝の5時までの夜勤もありますが、繁華街のため、この時間帯は男性を配置するなどの勤務体制を敷いています。

「工事が始まった当初は今とは違う別の女性技術者が1名勤務していました。夜勤などきつい仕事もいとわず、不満をもらさずにやってくれましたが、体力的には相当きつかったのではないかと思っています。こうした反省点を踏まえて女性スタッフの活用は適材適所を心がけています」(佐伯所長)

東京鉄道支店新橋駅作業所の岩川さんは「新橋駅作業所の現場事務所2階に女性専用フロアが設けられていて快適です。入社2年目ですが、少しずつやるべきこと、仕事の進め方がわかってきたところです。弊社では、現場でずっと働いている女性社員がまだ出ていないので、私がその筆頭になりたいと思っています」

「ゼネコン女性交流会」に参加

平成27年4月に大成建設㈱主催でゼネコンの約20社が集まる「ゼネコン女性交流会」が開催され、同社でもWGメンバーである建築本部の和田さんなどが参加しました。この交流会は、日建協の女性技術者会議に参加した女性を中心に結成されたもので女性社員の交流を深める場として年2回開催されています。

和田さんが参加した第9回目は、大成建設㈱が東京駅の現場に足場でランウェイを作り、各社それぞれの作業着を披露する「作業着ファッションショー」が開催されました。

「各ゼネコンで女性専用の作業着のあるところは4~5社程度で、まだまだ手さぐり状態です。妊婦さん用の作業着、カイロを入れるところがついているものなど創造性にあふれた作業着も目につきましたが、明らかに女性とわかるようなものには抵抗があるというのが全体的な意見でした」(建築本部 和田さん)

また、同社でも今年4月から女性用作業着が初登場しますが、男性作業着もすっきりとしたデザインにイメージチェンジする予定です。

「ダイバーシティ推進ワーキンググループ」が発足

同社では、平成26年11月に「ダイバーシティ推進ワーキンググループ」を発足させ、女性社員の比率、採用男女比、女性役職者、職域、両立支援制度、育成などを調査し、現状分析を行っています。その結果、様々なことは男性視点で考えられ、女性の能力が十分発揮されていないということが分かりました。

こうした調査や分析を踏まえて、女性が活躍するための様々な取り組みを推進しています(表参照)。

「弊社では、技術職の女性で結婚・出産を経て残っている方は非常に少なく、とくに現場では前例がない状況です。女性社員も戦力として位置づけ、男性中心の体制から脱却し、性別に関わりなく活躍できる体制づくりが必要なため、今後は女性だけで語り合える場を作ろうと取り組んでいるところです。

ダイバーシティWGの取り組み

女性は、悩みを吐き出すだけで気持ちが落ち着く部分があります。また、女性技術職も人数目標をたてて採用するとともに、予定数の10%を超えるように採用しようという数値目標を立てました」(人事部課長 野本さん)

「チームひまわり」の母体である「建設物価調査会」では、育児休暇、時短勤務(満3歳まで、1日2時間を限度)が認められています。給料はその分カットされますが、時間変更も1度だけ可能です。また、男性職員も女性職員が育休を取るのが当然だと思っており、出産が理由で退社するという女性職員は出ていません。

しかし、内勤と現場とでは置かれている環境が違うため、現場で働く女性が継続してキャリアを形成していくには相当の覚悟がいるはずです。

「自分が現場でのロールモデルになりたい」と目標を掲げる新橋駅作業所の岩川さんをはじめ、情熱を持って仕事に取り組む同社の女性社員の方々がより能力を発揮できるように、これからも現場環境の研究や支援を重ねていきたいと取材を通して強く思いました。

和田さんが参加した「ゼネコン女性交流会」の様子を伝える社内報「ダイバーシティ通信Vol.1」
和田さんが参加した「ゼネコン女性交流会」の様子を伝える社内報「ダイバーシティ通信Vol.1」

チームひまわり 現場レポート

現場は世界有数のビジネス街、西新宿。交通量、人通りも多く複雑に埋設物が巡らされている中での開削工事は、「シビレます…」と現場所長。事務所はオフィスビルに置かれ、女性配慮がうかがえる“カワイイ”休憩室を設置。同期の事務職と技術職の女性が二名配属され、「いつでもお互い気軽に相談できます!」現場に対する細やかな心配りが感じられました。人事課長からは自社のダイバーシティ推進の取り組みを説明いただき、現場と組織が一体で労働環境改善に 努められているのがとても印象的でした。

鈴木さん

多様な働き方を認め活用することで大きな可能性を引き出し、新たな価値を生み出すことを改めて気付かせていただきました。取材の中では、仕事の裏話や貴重な社内統計資料を交えながら丁寧にご説明くださいました。この場をお借りして、ご協力に感謝を申し上げます。ありがとうございました。

鈴木