建設物価調査会

建設物価2016年2月号

女性が活躍できる現場づくりを進めている「東大和市清原一丁目地内から同市桜ケ丘三丁目地先間送水管(2,000mm)用トンネル築造及びトンネル内配管工事」を訪ねて

「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」

当調査会では、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として、女性職員を中心としたプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げています。第7回目は、㈱熊谷組JVが施工する「東大和市清原一丁目地内から同市桜ケ丘三丁目地先間送水管(2,000mm)用トンネル築造及びトンネル内配管工事」を訪ねてと、㈱ハマネツの「ネクストイレ/ドゥース」を紹介します。

土砂の管理や測量を担当

工事は、多摩地区の送水管の二重化、ネットワーク強化を図る目的で、東大和市清原一丁目から桜ケ丘三丁目までの延長L=2,520.5mを泥土圧式シールド工法で施工し、トンネル築造やトンネル内配管を整備するものです。防音ハウスに覆われた地上発進基地と発進立坑を2つに分け、「熊谷・ユーディケー・二友組JV」が施工するシールド工事と、他のJVが施工する2つのシールド工事でトンネルの掘削を進めていきます。

現場には、入社1年目の大塚怜奈さんが配属されています。「新人研修を得て、この現場に配属されました。当初はシールド工事がまだはじまっていなかったので、どんな工事になるのかまったくイメージできませんでしたが、今は全体が把握できるようになりました。掘削で出た土砂の管理、測量、材料の管理などの業務を担っています」

トイレがきれいで感動した

セグメントのシール貼りなどで時折現場を訪れる女性スタッフもいますが、常勤は大塚さん一人です。現場内には、作業所の電話番号が書かれたキャラクター付きのポスターが掲載されています。現場の雰囲気を少しでも和らげたいと大塚さんが手作りでつくったものです。トイレは、防音ハウス内、更衣室、現場の3ケ所に完備されており、「現場に来てトイレが清潔で感動しました」と大塚さんは話します。トイレの中には、芳香剤も設置されていますが、これも大塚さんが「トイレに芳香剤を置くとより清潔感が出るのでは」と提案したものです。中井信幸所長は「男性だけでは芳香剤は気が付かなかったと」と女性ならではのきめ細かな視点に感心していました。

工事現場の説明をする中井信幸所長
工事現場の説明をする中井信幸所長
構内入口
構内入口
防音ハウス内
防音ハウス内

現場で大塚さんが着用しているユニフォームは、職長と相談して製作したもので、下請けの方々も着用しており、一体感のある現場づくりに役立っています。ユニフォームは現在2着支給されていますが、測量などで相当汚れるので欲を言えばもう一着はほしいとのこと。洗濯は男女共用の現場の洗濯機を利用しているそうですが、男性と同じ洗濯機を使用していることに抵抗感はまったくないとのことです。「土木の現場なので泥まみれになることを覚悟していましたが、トイレや更衣室など働く環境が整っていて、良い意味で驚きました。しかし、更衣室がブラインドなので着替えるときに外から見えてしまうため、カーテンへの変更、トイレ内にサニタリーボックスを設置してほしいなどの要望を所長に話し改善していただきました。熊谷組の他の現場では女性が直接言いにくいこともあると思いましたので、女性技術者全体の要望として会社にも提案をさせていただきました」と大塚さんは話します。

働きやすい環境づくりに全社挙げて取り組む

現在、熊谷組には建築59名(1名育児休暇中)、土木7名の女性技術者が所属しています。

より快適な職場環境づくりを行うために現場の女性たちの声を吸い上げた「職場環境マニュアル」の整備や、安全帯の軽量化、顔に日焼け跡が残らないヘルメット紐の改良など、現場と関連部署が一体となった施策にも積極的に取り組んでいます。

また、熊谷組グループでは男女わけ隔てなく働きやすい環境をつくることを目的として「みんな活き活きプロジェクト(」通称「イキ活」)が平成27年9月より本格始動しました。「意識改革」「職場環境整備」「育児・介護と仕事の両立」などの課題についてワーキンググループを立ち上げ、具体的方策を検討し、順次実施展開していくこととしています。

大塚さんは将来についてもしっかりと考えている女性です。「今後、結婚して出産や子育てを経験した時に、内勤などへ移動できる体制が整っていることも熊谷組を選んだ動機の一つです。また、他の現場を巡回する安全パトロールに参加し、盛土をしてから道路を整備する工事のダイナミックさに惹かれ、将来あかり工事をしてみたいと思っています。」

熊谷組では、「職場環境マニュアル」や、「みんな活き活きプロジェクト」などを通して、大塚さんをはじめとする女性技術者の働きやすい環境づくりに今後とも全社をあげて取り組んでいく予定です。

シールド工事が計画通りに行われているかなどを確認しています
シールド工事が計画通りに行われているかなどを確認しています
シールド工事の最前線に立つ大塚さん
シールド工事の最前線に立つ大塚さん

チームひまわり 現場レポート

今回は送水管用トンネル築造工事の現場を見学しました。こちらの現場では常駐の女性の技術者は大塚さん1人ではありますが、更衣室やトイレなど、これまでチームひまわりで紹介してきた設備が整っており、環境づくりへの配慮が感じられました。その具体例として、熊谷組さんでは環境整備の面で、社内マニュアルの作成に取り組んでいるようです。女性が現場にいることで気付いたポイントなどをマニュアル化し、各事務所へ周知される予定です。また、私たちチームひまわりと同じように、「女性活躍推進運動」(通称「イキ活」)という社内の取り組みがあります。

杉山さん

チ ームひまわりの活動も手探りでの状態から始まったので、他社の社内チームがどのような活動をしているのか等、今回のような意見交換ができる機会があれば、より有意義な活動ができるのではないか、と感じました。

ワーキングの様子なども伺うことができ、いい刺激を受けることができました。ぜひ、次号もご覧ください。

杉山