建設物価調査会

建設物価2016年2月号

建設現場における女性にもやさしいトイレの開発について「女性が安心して快適にご利用いただけるトイレとは…」 株式会社ハマネツ 営業企画部 木下 勇一

はじめに

平成26年に「すべての女性が輝く社会づくり推進室」が発足し、平成27年には「暮らしの質」向上検討会にて暮らしやすい空間へと転換する象徴としてトイレが取り上げられました。

国としてこういった取組みがある一方で近年の少子高齢化に伴って若年層の建設業就業者割合が低い状況にあり、さらに建設現場においては男性が中心であることから女性に配慮した現場であるとはいえない状態です。女性にとって働きやすい環境を整備することが男性にとっても働きやすい環境となるためトイレや更衣室などのハード面での環境整備は重要視されています。

弊社は昭和40年より様々なトイレ開発に着手してきました。そのノウハウを活かして「女性が安心して快適に利用できるトイレ」をコンセプトに開発を行なっています。

開発にあたって

「女性が安心して快適に利用できるトイレ」をコンセプトにスタートした取組みですが、男性陣が中心となる弊社の開発業務において、何が女性のためになるのか、想像がつかず、手さぐりでのスタートとなりました。

開発するにあたり、必要なことは女性の声を如何にして製品に反映させるかということでした。しかし、男性陣のみの開発では限度があり、マーケティング活動をするにあたっては女性の声、できれば現場に従事している方の声が必須であると考えていました。そういった状況の中、営業部門の力を借り現場作業従事者の声を反映させるべく、アンケートという形で多くの方々に協力をいただきました。また、女性作業従事者に留まらず、様々な展示会の場を活用して多くの方々から貴重な意見をいただき、「お客様目線」のトイレ開発にいたりました。

【写真1】仮設トイレの内観
【写真1】仮設トイレの内観
【写真2】常設トイレの外観
【写真2】常設トイレの外観

アンケートから見えるイメージ像

女性現場従事者へのアンケートから見えてきたことは、従事する現場の種類によって必要とする設備、大きさが多種多様であること、加えて現場の規模によっては女性専用トイレを設置してもらえるのはうれしい半面、少し気が引けるとの意見もありました。

女性専用トイレの設置の中で最も要望が多かったのは水洗トイレです。仮設トイレの簡易水洗では臭いが気になるという意見が多くみられました。

更衣室は約70%の方が必要性を感じています。さらに女性しか使用できないようなセキュリティ(鍵など)を設けることや衛生面に配慮した作りへの要望もみられ、メーカーとしてハード面での解決模索が必要な一方でソフト面に関する意見も多々みられました。ハード面での解決がソフト面の解決につながるような対策も併せて必要であると改めて感じるアンケート結果でした。

アンケート結果

女性専用シャワーブースを設けることについては豪華すぎるとの意見が多く、80%以上の方が不要との回答でした。

こういったアンケート結果から見えてきたイメージ像は女性目線で考えてみれば当たり前のことでも現場ならではの問題を含んでいたりと一長一短には解決できない問題も多々見られました。こういった問題を解決していくことがメーカーの責務であり、今後の課題であると改めて認識させられました。

製品化を終えて

ご協力いただいたアンケートを基に【ネクストイレ/ドゥース】を開発しました。更衣室はプライバシーを考慮してカーテンによる仕切りを設け、手洗場には化粧直しができるようカウンター付手洗器と鏡を設置し、収納スペースを確保、洗浄方式は要望が多かった水洗式に加え、工事の都合上配管等ができないことも考慮しポンプ式簡易水洗タイプも採用しました。

今回の製品化した1機種のみですべての現場で対応が可能なわけではありません。現場によってはトイレと更衣室を分ける必要性があったり、セキュリティ対策を講じつつ男女兼用でなければならないなど様々なニーズに対応できるバリエーション展開が必要だと考えます。今後、メーカーの立場として現場のニーズに対応するべくさらなる開発を続けることこそがメーカーとしての責務であると感じています。

また、今ある製品を改良してフィッティングボードなどを追加し女性にとってさらに使いやすいトイレとすることや、トイレに限らず様々な使い勝手のいいアイテムなど様々な方面からのアプローチも必要であると考えます。

【写真3】更衣室としても使用可能なフリースペース
【写真3】更衣室としても使用可能なフリースペース
【写真4】カウンター付手洗器と鏡、収納スペースを確保
【写真4】カウンター付手洗器と鏡、収納スペースを確保
【写真5】広々としたトイレ専用スペース
【写真5】広々としたトイレ専用スペース

現場への導入に向けて

製品化を終え、様々な展示会への出展や広告、営業活動での紹介を通して多くの問合せをいただいております。しかしながら現場へ導入するためにクリアすべき課題として、現場の設置スペースや費用面の問題が挙げられます。平成26年に掲げられた「すべての女性が輝く社会づくり推進室」が始まって以降は国土交通省や各都道府県による助成金制度を活用した女性用仮設トイレの導入があります。

その助成金制度の活用により【ネクストイレ/ドゥース】は販売実績も上がっており、国のモデル事業にも導入されました。

このように製作したものが現場で活用され、女性が安心して快適に働くことができる環境を整備すること、そして女性のための環境整備が男性にとってもプラスに働き相乗効果として現場環境がよりよくなることはメーカーにとって非常にうれしい限りです。

今後の課題

今回は女性現場従事者の声をアンケートを通して直にお聞きすることで製品化に至りました。

しかしながら、現場毎の違う環境に適した大きさや設備の整ったトイレを用意することは簡単なことではありません。例えば、トンネル工事においては設置場所の関係で大きな仮設トイレは設置できません。さらに暗いトンネルにおいてトイレを男性用と女性用に分ける際には防犯ブザーの設置・外灯の設置などが必要です。このようにトンネル工事に限らず現場毎に見合った設備が必要となるのです。

現場の環境整備を行うにはどういったアイテムが必要なのか? どのような機能をもった仮設トイレが必要なのか? 現場担当者とのコミュニケーションを通して、あるいは国や地方自治体の取組みから得た情報を如何にして製品として反映させるか、またその製品を如何にして世の中に普及させていくかが重要であると考えています。

建設業界においては昔から3K (危険・汚い・きつい)と呼ばれる悪いイメージが根付いており、これが建設業界全体の就業者数の減少を招いている一つの要因であると考えています。3Kの中の汚いについては現場における仮設トイレのイメージも含まれていると考えます。従来より仮設トイレは汚いイメージが強く、使用するにも敬遠されがちです。このような風潮を見直すための製品を製作する等の取組みを行うことが現場環境整備に寄与し、業界のイメージアップにつながるはずです。

女性が快適に利用できるトイレを前提とした開発ではありますが、こういった取組みから女性だけではなく男性も快適に働くことことができる現場環境作りに役立てると考えています。

今後、国や地方自治体、あるいは民間企業等で行われる現場環境の改善活動に役立つものを開発し世に送りだすことがメーカーとしての意義であり、建設業界への貢献だと考えます。

【写真6】完成品の展示会への出展状況
【写真6】完成品の展示会への出展状況
【写真7】ネクストイレ設置事例
【写真7】ネクストイレ設置事例