建設物価調査会

建設物価2019年12月号

夏のリコチャレ
首都高速道路の更新工事の現場を見学し、土木の魅力を体験
株式会社大林組 首都高東品川JV工事事務所を訪ねて

 理工系の分野に興味のある小学生、中高校生の女子が職場見学・仕事体験・女性技術者との交流を通して理工系の仕事や将来に触れられるイベント「リコチャレ」。首都高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事の現場で開催されたリコチャレには小学生から高校生までの6人が参加しました。大林組の女性技術者による説明を熱心に聞きながら、付き添いの保護者も一緒に和気あいあいとした雰囲気で見学会が行われました。


100年もつ道路 へと更新

 見学会の会場となったのは、東京都品川区の首都高羽田線の更新工事現場。1964年の東京オリンピックに向けて建設された首都高速1号羽田線は、完成から55年が経ちました。老朽化が進み、東品川桟橋・鮫洲埋立部の約1.9Kmを長期耐久性や維持管理性に優れた構造に造り替えています。1日7万台の交通流を妨げないように仮設のう回路を設け、道路を切り替えながら工事を進めています。東京2020オリンピック・パラリンピックを視野に入れ、工期短縮のためにプレキャスト製品を積極的に使用するなどの工法で工事が進められています。工期は、2015年から2025年の10年です。


目を輝かせる参加者たち

 支給された作業服に着替え工事事務所に集まった参加者の子どもたちは、所長の挨拶に続き、見学会の流れや工事概要の説明を受けたあと見学会場へと出発しました。
 
 まずは事務所1階にあるインフォメーションルームのジオラマで工事の全容を学びます。その後ヘルメットや安全帯を装着し、東京湾が見下ろせる建設中の道路に上がると、子どもたちは実際の現場の壮大な景色に目を輝かせていました。
 
 現場はまだアスファルトの敷かれていないプレキャストコンクリートのままの地面で、作業中のクレーンやトラックもありました。また、プレキャストコンクリートの継ぎ目にコンクリートを打設したり、防水工事を施したりする職人さんがテキパキと働いており、見学会の間も道路が出来上がっていく様子を見ることが出来ました。
 
 そうした現場の様子を見た参加者から次々と出てくる質問に、技術者の方々がわかりやすく説明する姿が印象的でした。
 
 見学後は、バスで現場事務所に戻り、氷菓でクールダウンしながら、熱中症対策の取り組みが紹介されました。その後もクイズや質疑応答など楽しく有意義な時間を過ごしました。
 
 リコチャレには、保護者にすすめられて参加した小学生や将来のキャリアを考えて参加した高校生などさまざまな参加者がいます。みんな、最初は緊張していましたが、最後は晴れ晴れとした顔をして帰っていきました。

ジオラマで工事概要の説明を受ける子供たち
いざ、現場へ!
現在の現場の様子撮影協力:首都高速道路株式会社
見学後のクイズタイム


女性技術者との座談会

 工事事務所には男女他職 種もあわせて80人おり、うち土木の施工管理をしている土木系女性技術者が4人います。 リコチャレで現場を案内してくださった大林組のお二人にお話をうかがいました。

●大林組に就職したきっかけは?

【白浜さん】中学3年の時に親がお店を建てることになり、半年後には、設計事務所の人が描いた設計図どおりのものが完成したことに感動し、将来は建設業に進もうと決めました。公共性の高い土木に魅力を感じて大学は土木に進み、ゼネコンに就職しました。別の会社で施工管理と技術開発に携わり、出産を機に一度退職しましたが、土木の仕事に戻りたくて、大林組に再就職しました。

【藤永さん】親が建設業だったため、興味を抱き、大学は土木学科に進学しました。大学3年の時にインターンシップで大林組の現場に2週間行き、みんなでひとつのものをつくることのすばらしさを実感したことがきっかけです。

● 今の仕事内容や仕事において気を付けていることは?

【白浜さん】この現場の施工管理をして4年になります。今は工事長として現場全体の作業の統括をし、経験を積み重ねているところです。

【藤永さん】協力会社の作業員さんへの指示では分かりやすく伝えられるよう気をつけたり、その時その時にあったアプローチを考えて仕事を円滑に進めるよう努力しています。

●やりがいは?

【白浜さん】現場の仕事は日々進捗していくので、今日頑張ったことがすぐに分かります。昔は3Kといわれていましたが、今は、とても働きやすい環境です。将来、子どもが建設業に就きたいといったら背中を押したいですね。女子に限らず若い人たちにどんどん来て欲しいです。

【藤永さん】構造物は一品生産です。コンクリートを打つにしても、形や性質、強度、環境の条件など全て異なります。そんな作業に携わった人のさまざまな工夫や思いがつまった構造物が完成した瞬間に、一番やりがいを感じます。

●今後の目標は?

【白浜さん】どこの現場に行っても「【白浜さん】がいるから協力するよ」といってもらえるように信頼関係を築き、あと20年はこの世界で頑張りたいです。

【藤永さん】現場の安全のために日々の点検をとおして細かいところを見る力をつけて、先輩がこなしている仕事ができるようになることが目標です。

●建設業に入ってくる人へのアドバイス

 女性だからできないことはありません。好きなことを仕事にして、結婚や出産もあきらめないで手に入れて欲しいですね。育休や時短が今は当たり前になりましたが、権利だからと甘えず、頑張ることも大切です。


チームひまわり 現場レポート

 今回は首都高速1号羽田線更新工事の現場を見学しました。
 
 こちらの現場では理工系の分野に興味のある小学生、中高校生の女子が職場見学・仕事体験・女性技術者との交流を通して理工系の仕事や将来に触れられるイベント「リコチャレ」の一環として、子どもたちが実際の工事現場を体験できるイベントが開催されました。わたしたちも子どもたちに混ざって、建設業の面白さを学ばせて頂きました。

浮須

 見学には小学生から高校生までが参加しており、建設工事や業界への関心の高さが伺えました。
 
 見学に同行して下さった白浜工事長と藤永さんは「こんなに面白い仕事はない!」と語ってくださり、当初は緊張した面持ちだった子どもたちも建設業についてより一層興味が湧いたようで、イベントが終わる頃にはキラキラとした表情になっていました。
 
 大林組でCSRを担当している大橋さんからは、ダイバーシティ推進に関する大林組の取り組みについて教えて頂きました。
 
 大林組はダイバーシティ推進について業界の中でも先駆者的な存在で、業務において性別の隔たりがないことはもちろんのこと、育児や介護、キャリアアップのための留学制度など、社員のライフプランに寄り添ってサポートするという考え方が全社的に浸透しているそうです。誰もが活き活きと働くことが出来る環境があることは、建設業にかかわらずこれからの社会で大切なことだと私
も感じました。

 今後も記事を通して、より良い働き方を探す手助けができたらいいなと思います。次号もお楽しみください。