「建設業での女性活躍「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」スタート!
背景
国土交通省と建設業5団体は、もっと女性が活躍できる建設業を目指して、女性技術者や技能者を5年以内に倍増させる目標を定め、昨年8月に具体的な行動計画を策定しました。
この行動計画の中で、
①建設業に入職する女性を増やす
②働き続けられる職場環境をつくる
③女性が更に活躍しスキルアップできる環境を整える
④建設業での女性の活躍の姿を広く社会に発信する
ことにより、男性も含めた業界全体の職場環境の改善や意識変化を促し、更なる女性の活躍につなげ、好循環に導くとしています。
また、国土交通省では、女性技術者を現場に配置することを入札参加要件とするモデル工事を試行するなど女性登用を促す取り組みを行っています。一般社団法人日本建設業連合会では、建設業で活躍する女性技術者・技能者の愛称「けんせつ小町」のロゴマークを作るとともに、建設業における女性の活躍をアピールするために「なでしこ工事チーム」を登録・紹介する取り組みを行っています。
プロジェクトの結成
このように官民挙げて、もっと女性が活躍できる建設業を目指して、各種取り組みがなされているなか、当調査会でも、「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」として女性職員中心にプロジェクトチーム(愛称“チームひまわり”)を立ち上げました。
プロジェクトの活動内容
建設業での女性活躍を応援するために、『建設物価』やホームページなどで各種情報を発信していく予定です。今のところ、①女性が活躍する現場のレポート、②発注者や受注者の協会団体などの各種施策・取り組み、③メーカーの女性向け新商品などの情報を、女性ならではの目線・感性で順次紹介することを考えています。この他にも、プロジェクトの目的に叶う取り組みであれば、どんどん進めていくつもりです。今後とも、応援のほどよろしくお願いします。
今月は、第1回目として、女性が活躍する建設現場のひとつ、東京外環自動車道田尻工事の「チームなでしこ外環田尻」を訪ねました。(“チームひまわり”より)
国土交通省が掲げる女性が活躍するための10のポイント
- 建設業界を挙げて女性の更なる活躍を歓迎
- 業界団体や企業による数値目標の設定や、自主的な行動指針等の策定
- 教育現場(小・中・高・大学等)と連携した建設業の魅力ややりがいの発信
- トイレや更衣室の設置など、女性も働きやすい現場をハード面で整備
- 長時間労働の縮減や計画的な休暇取得など、女性も働きやすい現場をソフト面で整備
- 仕事と家庭の両立のための制度を積極的に導入・活用
- 女性を登用するモデル工事の実施や、女性を主体とするチームによる施工の好事例の創出や情報発信
- 女性も活用しやすい教育訓練の充実や、活躍する女性の表彰
- 総合的なポータルサイトにより情報を一元的に発信
- 女性の活躍を支える地域ネットワークの活動を支援
「建設業での女性活躍を支援するプロジェクト」
現場の意識改善などに取り組む東京外環自動車道田尻工事「チームなでしこ外環田尻」を訪ねて
東京外環・田尻工事は大成・戸田・大豊のJVが担当
東京外環自動車道は、都心から約15kmの圏域をぐるっと輪で結ぶ延長約85kmの高速道路で、首都圏の渋滞緩和、環境改善や円滑な交通ネットワークを実現する上で重要な道路です。現在までに、大泉JCTから三郷南ICまでの約34kmが開通しており、残りの約50kmが整備中区間となります。
千葉県内では、松戸市小山~市川市高谷までの延長約12.1kmの区間にて工事が行われています。地下に東京外環自動車道を整備し、地上を走っている京葉道路との接続ポイントとなる京葉JCT (仮称)を建設するのが東京外環自動車道田尻工事で、大成建設・戸田建設・大豊建設のJVが工事を行っています。
女性目線で現場の改善を行っている
田尻工事では、女性職員で構成する「チームなでしこ外環田尻」が2014年6月に発足し、女性がいきいきと働ける建設現場にするために、女性の目線から現場環境の改善を行ってきました。発足当時から約10名の女性技術者や技能者で構成され、現場環境の改善に向けた意見交換を定期的に行い、作業所長や専門工事業者の職長に様々な提案を行っています。


チームリーダーである大成建設の高橋奈帆子さんは「田尻工事は女性の多い現場です。(一社)日本建設業連合会が、工事現場での女性を応援するために女性工事チー
ムの募集を開始した際に、田尻での取り組みを現場外に発信する良いチャンスと考え応募し、同連合会から第一号として選定されました。当工事の枌野勝也統括所長からも女性が活躍できる職場環境の整備をぜひ行ってほしいとの応援もいただきました。建設現場で働く女性に対する意識の改善を工事関係者へしっかりと伝えていきたいです」と話します。
トイレなどの改良にも取り組んだ
建設現場は男性中心のため、女性専用のトイレが少なく、十分に確保されているとはいえません。また、女性専用のシャワールームや更衣室・休憩室なども女性にとっては、必要不可欠な設備です。
「チームなでしこ外環田尻」が働きやすい職場環境づくりのためにまず取り組んだのがこうした設備の改善です。女性専用休憩室を畳にしてくつろげるようにし、エアコンを設けました。また、トイレには鏡が付いた化粧台を設置して、身だしなみのチェックがスムーズにできるように改良しました。
さらに、今後女性が増える時のことを考えて、困らないように、既存のトイレとこれから設置する予定のトイレの場所などを示したマップも作成しました。また、「現場で不足している女性用品などもリストアップして、これから備えたいものとして、随時提案も行っています」(高橋リーダー)

女性用用具の製作にも関わる
女性職員の多くは、直射日光による日焼けや熱中症を避けるために、ヘルメットの周りをツバで囲んだり、あごひもの部分に透明のビニールを取り付けてひもの跡が残らないようにするなど、工夫を施していました。
また、工具や安全用具が男性仕様のため、サイズが合わなかったりして、女性にとって使いづらい点について意見・提案を行い、安全用具会社の女性用用具の製作にも関わりました。


イルミネーションを設置しイメージアップを図る
昨年の12月には現場にイルミネーションを設置しました。他の東京外環自動車道の工事現場でも同じようにイルミネーションを設置したところもありましたが、男性目線で作ったものにはない柔らかさと手作り感が醸し出されて好評でした。
さらに、「なでしこ工事チーム」を紹介するVTRやポスターの制作を行い、現場見学者等に対する活動の周知に役立てています。今後は子ども向けのイベントとして、夏休み期間中に子どもたちに仮囲いをデザインしてもらい、楽しんでもらえるイベントを行いたいと考えています。また、高橋さんは「女子学生に対して、土木の仕事の意義を紹介するなどのリクルート活動の要請があった場合には喜んで参加したいです」とも話しています。
枌野勝也統括所長は「なでしこ工事チームが発足したことで、職場も明るくなり、同期の男子社員も負けてはいられないとライバル意識をもつなど良い意味での相乗効果が働いています」と話します。
近い将来、女性がいる建設現場が当たり前になると、設備も男女別々に分けて設置することを考えていかなければなりません。東京外環自動車道田尻工事「チームなでしこ外環田尻」の経験や実績が、女性の働きやすい環境づくりへのロールモデルとして役立っていくことでしょう。

(外環道パンフレットより)
東 京 外 環・田 尻 工 事 の 概 要
田尻工事は、千葉県市川市で外環自動車道本線(延長990m)と、輻輳する京葉道路に接続する京葉ジャンクション(仮称)のランプ4本を、最先端工法を駆使し地下に建設する難易度の高い工事です。
田尻工事の約80%は開削工法で計画されており、1日12万台の交通量がある京葉道路や国道298号線、主要県道市川浦安線などを通行止めせずに十数回迂回させ施工を行っています。
地下に構築される外環本線のさらに下部にランプが位置する部分では掘削深度は29.4m、地中連続壁の深度は最大で52mにも及びます。そのような大深度の壁体は従来工法では施工不能なため、本工事ではJVスポンサーの大成建設株式会社保有技術の「UD-HOMET工法」を採用し、約5万㎡を精度良くトラブルなしで完成させました。
また、地上が制約され開削工法を採用できないランプは、非開削工法(小土被り発進する大断面シールド、急曲線施工の矩形推進(ハーモニカ工法)+アンダーピニング工法)を採用しています。
シールド工法は、土被り約2mと非常に浅い部分で発進し直後に供用中のランプ下部を通過するため様々な地盤変状対策工を施したうえで発進します。また、地中で残置杭に干渉することが分かっているためにビットを補強し掘進スピードを制御しながら掘進します。
またハーモニカ工法では、供用中の主要県道下部を低土被りで発進すること、同工法で最も急な曲線(最小R=54.5m)での施工に挑むこと、アンダーピニング工法を組み合わせることで地上の変状を抑制する初の試みなど、先端技術を駆使して施工を進めています。
前途の「チームなでしこ外環田尻」のイルミネーションの取り組みだけでなく、近隣の小学校、地域住民等の見学会を積極的に受け入れるなど、発注者のNEXCO東日本千葉工事事務所と協同して工事現場のイメージアップ、工事への理解を得る為に様々な取り組みを行っています。



チームひまわり 現場レポート
インタビューをする中で、将来の建設業について「多くの子供達に将来の夢として建設業を目指してもらいたい。現場見学等でもっとこの業界にたくさん触れてもらう機会を作ってほしい。」という想いを語る姿がとても印象的でした。その言葉を受け、私も男の子だけでなく、もっと多くの女の子が「道路や橋、ビルを作るってカッコイイ!」と夢を持つような業界になるといいなと感じました。

このプロジェクトを立ち上げるにあたり、女性職員一同は「建設業において、もっと女性が輝ける環境づくりをサポートしたい!」という思いで、この度“チームひまわり”を結成しました。太陽のように明るい建設業を目指して、女性職員一丸となって活動していきます。ぜひ次回記事もご覧下さい。
緒方